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歯周病と全身疾患

歯周病と全身疾患

 歯周病はさまざまな全身疾患と関連していることが報告されています。なかでも歯周病と糖尿病との関連はエビデンスが高いものとして知られています。その他にも、歯周病は、心疾患や慢性腎臓病、呼吸器疾患、骨粗鬆症、関節リウマチ、悪性新生物(がん)、早産・低体重児出産など、さまざまな全身疾患と関連していることが報告されています。それらのなかにはエビデンスが十分ではないものもありますが、いずれにしても、歯周病を治療することにより口腔の健康を維持することは、全身の健康維持にとっても重要であるといえるでしょう。

歯周病と糖尿病①

 糖尿病が歯周病を悪化させる一方で、悪化した歯周病が糖尿病の病態に悪影響を及ぼすことを示す研究結果が多く報告されており、糖尿病と歯周病の間には双方向の関連性があることがわかっています。

 厚生労働省の「平成28年国民健康・栄養調査」の結果、20歳以上の国民のうち糖尿病が強く疑われる人(糖尿病有病者:HA1c6.1%以上)、糖尿病の可能性を否定できない人(糖尿病予備群:HA1c5.6%以上6.1%以下)の割合と人数は、いずれも12.1%、約1,000万人と推計されています。

(下図:厚生労働省「平成28年国民健康・栄養調査結果の概要」)

歯周病と糖尿病②

 つまり、現在およそ2000万人の国民が糖尿病の患者さんであるか、その予備軍であると考えられています。一方、この調査では、糖尿病が強く疑われる人のうちおよそ2割が医療機関を受診していないという、とても心配なデータも示されています。

(下図:厚生労働省「平成28年国民健康・栄養調査結果の概要」)

糖尿病を治療すれば歯周病が改善し、歯周病を治療すれば血糖値が改善

 糖尿病の患者さんは歯周病になりやすく、歯周病になると治療が難しくなることが知られています。一方で、歯周病になると血糖のコントロールが悪くなるともいわれています。

 歯周病の原因は、歯の表面に付着している「プラーク」です。プラークとは、不適切な歯みがきによって歯周ポケットにたまった歯垢や歯石のことであり、歯周病の原因となる細菌のかたまりです。

 糖尿病の患者さんは、高血糖状態が続くことによって歯周病菌による炎症をおこしやすくなり、歯を支える骨が破壊される「骨吸収」が進みます。逆に歯周病があると、インスリンのはたらきが悪くなり、血糖コントロールが悪化します。(下図)

 つまり、糖尿病は歯周病の「原因」であるとともに「結果」でもあるということです。ですから、糖尿病の患者さんで歯周病を合併されている方々には、積極的な歯周病治療が有効です。

 また、糖尿病の患者さんや予備軍の方々は血糖コントロールに努め、糖尿病の三大合併症や心筋梗塞、脳梗塞とともに歯周病を予防することがきわめて大切になります。

 健診等で糖尿病や予備軍の可能性が指摘された方々は、ためらわずにかかりつけの内科医を受診し、血糖値のコントロールに努めていただく必要があります。また、かかりつけの歯科医を見つけて定期的に歯周病のチェックに努めていただくことが糖尿病の予防や治療につながることを知って頂けると幸甚です。
執筆者
札幌歯科 院長 坂本渉
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